残業上限、月80時間 医師も24年度から
時間外労働の上限を月80時間までとする働き方改革関連法が2019年4月に施行された。
ただ医療提供体制への影響が大きいため、医師への適用は5年猶予し、24年4月から対象となる。
地域医療の維持に不可欠な病院の医師や研修医は月155時間まで時間外労働を認める特例も設けた。
特例を適用する場合も、連続勤務は28時間までで、終業から次の勤務まで9時間のインターバル(休息)を置くなどの健康確保の措置を義務付ける。
特例は35年度末の廃止が目標だ。
現場の医療関係者の不安や不満は根強い。
医師不足の中で長時間労働によって地域医療を担ってきた病院からは「診療体制を維持できない」との声が上がる。
大学病院などの勤務医が別の病院や診療所でアルバイトをして収入を確保する慣習も影響を受ける可能性がある。
アルバイトなどの副業も時間外規制の対象になるためだ。
診療縮小や病院の再編が進むとの見方もある。
医師法は診療を求められた際に正当な理由なしに拒否できない「応召義務」を規定するなど医師には高度な社会的責務が期待されている。
一方で労災認定される「過労死ライン」(月80時間超)の2倍近い時間外労働を認める特例には、なお不満がくすぶる。
医師の労働環境を改善しながら、診療体制を守るには、地方や診療科ごとの医師偏在の解消などが求められる。